ロン毛取立人

戦慄怪奇ファイルコワすぎ!と逆転裁判とワンピースで身体の半分が構成されている腐女子です。

アンナチュラルは人生に檸檬の香りの概念を与えてくれるし、実質『アイカツ!』(ドラマ アンナチュラル 感想)

今回私が言いたいことは全てブログタイトルで説明が出来る。(それはいつもの事である)

 

 これを書いている私は、このブログを読んでいる奇特な読者の方々はおおよそオタクだと勝手に踏んでいるので聞く。

 


オタク達、ドラマ「アンナチュラル」観た!?!?!?!

 

 

アンナチュラル Blu-ray BOX

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  • 発売日: 2018/07/11
  • メディア: Blu-ray
 

 

 


 視聴していない場合は一刻も早くアマゾンプライムに登録して第一話を観て下さい!!!そして気が向いたらこのドラマを見て気が狂ってしまった私の記事を読んで下さい!

 

 

 かくいう私もアマプラにこのドラマが登録された事と、ツイッターでフォローしているオタクがアンナチュラルを観て発狂していた事がきっかけで視聴を始めた。――その結果、おおよそ三日ほどで全話視聴した熱狂的なアンナチュラルオタクが爆誕した!

 

 まじでこのドラマをリアルタイムで見ていなくて良かったと思う。こんなん週の終わりの金曜日にぶち込まれたら面白さと苦しさと続きの見たさで発狂して死ぬ……。全話観れる環境でよかった……。


 因みに私は普段ドラマというものを殆ど視聴しない。最後に全部見たドラマはアマプラ限定配信の海外ドラマのグッドオーメンズ(このドラマはブロマンスに親を殺された人間に見て欲しい)くらいだ。

 

 アイカツ!を視聴する前にも思ったが、基本的に私は連続ドラマや話数のあるアニメを見る事が苦手だ。映画館で映画を見る事は好きだが、逆に言えばそれはそんな状況でもなければ数時間ずっと画面を食い入るように見る事が疲れるし、少し苦手なのである。(アイカツ!を見れた事でその感情は少し緩んだが)

 


……と、ここまでつらつらと語ったところで、この記事はそんな私がアンナチュラルの何にそこまで惹かれ、狂ってしまったのかを思考の整理の為にまとめようとするものである。話題になったドラマなのでこういったブログ記事は世の中にありふれているが、私の心の整理の為に書く、と前置きを入れておく。

 

 

 


1 アンナチュラルってどんなストーリー?

 


 このドラマの舞台は主に不自然死究明研究所(UDIラボ)という施設。そのラボで働いている法医解剖医の三澄ミコト(石原さとみ)が主人公である。ストーリーはほぼ全編に渡り、UDIラボに運び込まれた死因解明を望まれる遺体を大きな軸として、ミコト達UDIラボの職員達の奮闘と、死者と遺された人々の姿をありありと描く。

 

 基本的には一話完結型で、毎回新たな死体がラボに運び込まれる。その遺体の死因は事故死であったり、凍死であったりと様々。

 

 否が応でも誰かの“死”を見つめなければならない状況で、己の無力さに泣き、怒りに震え、それでも未来に生きなければならない、そんな人々の物語だ。

 

 一話完結の物語中でも、犯人不明の連続殺人を追うという大きなバックストーリーが同時にゆっくりと、だが確実に展開される。

 

 一話おおよそ四十五分ほどで展開されるストーリーの中には、このような重く苦しいストーリーでありながら、それを感じさせない程の登場人物のコミカルな会話や、視聴者を飽きさせない為の、最初の見立てからも二転三転する事件の全貌が、本当にテンポ良く描かれる。

 

 まずここまで読んで一話だけ見て、そのテンポの良さに引き込まれたのなら、是非最後まで見て欲しい。最後まで期待を裏切る事無く、アンナチュラルは最高を超えたまま最終話まで駆け抜ける。一話だけで主要人物達の人物像や、この物語は“何を描くのか?”ははっきりと分かるだろう。

 

 

 

2 その魅力的な登場人物達

 


 この物語の主人公は前述した通り石原さとみ演じる三澄ミコト(みすみみこと)だ。

 

 食べる事が好きで、一話に一回は彼女の食事シーンが入る。この物語の一番最初もロッカールームで天丼を食べている彼女の食事シーンから始まる位だ。この“食べる”という行為は“死”から最も遠いところにあるといっても過言では無い。死がすぐ側に這い寄るこの物語で、生きる為に食べる彼女の姿は何よりも美しいものに感じる。遺された遺族に「食べる気分じゃ無いからこそ食べる」と言い切ったミコトは、この物語の中で誰よりも生きている。

 

 彼女は実の母親による無理心中に巻き込まれ、家族の中で唯一生き残ったという過去がある。その為、“不条理な死”を何よりも憎んでいる。その姿勢は作中において一貫しており、不条理な死に巻き込まれた死者達に対し、真摯に向かうその姿はこの物語の主人公にふさわしいと思う。

 


 この物語にはもう一人主人公と呼ぶにふさわしい人物がいる。それは井浦新演じる法医学者の中堂系(なかどうけい)だ。

 

 傍若無人で態度が悪けりゃ口も悪い。愛想も特に無く、すぐに「クソが」を連発し(まじで一話に一回は絶対に言う)協調性も無いせいでチームを組んだ臨床検査技師は一瞬で辞めていく。そしてその末にパワハラで訴えられても本人にはその自覚が無い。どうしようも無いほどの欠点だらけの人物だが腕は確か。――そして、「アンナチュラル」という物語はそんな彼が未来を向いて歩いていけるようになるまでの物語でもある。

 

 彼は八年前、恋人の女性を不自然死で亡くしているという過去がある。一時は、彼自身が恋人の解剖を担当した事で犯人だとも疑われるが、証拠不十分で釈放される。未だに恋人を殺した犯人は捕まっておらず、唯一残っていた犯人の痕跡(被害者の口内に残された、赤い金魚の痕)だけを辿って、八年間、ずっと犯人を憎み、恨み続けながら前に進めずにいる。

 

 誤解を恐れずに言うと、彼はこの物語屈指の萌えキャラである。最初は誰とも関わりを持たず、毛嫌いされていた彼が、ミコト達が事件の事を知っていくにつれ彼女らを受け入れ、行動を共にする事も増える。パワハラで訴えていた相手とは「もうクソとは言いません」という大真面目な宣誓書を書かされ、クソという度に弄られる。当初は滅多に食事シーンも描かれなかった彼も、物語が進んで行くにつれ、共に食事をするシーンが挟まっていく。死んだように、犯人への憎しみだけで首の皮一枚繋がっただけで生きていた彼は、この物語の中で確かに息を吹き返す。これは彼の清算と再生の物語だ。

 


 ミコトの同僚で、この物語を色鮮やかに彩ってくれるのが、市川実日子演じる臨床検査技師東海林夕子(しょうじ ゆうこ)だ。市川さんを私はシンゴジラの尾頭さん以外で初めて見たのだが、彼女がいなければここまでこのドラマが輝く事はなかったと思うくらいに、素晴らしいキャラクターだった。どうしてもシリアスになりがちなミコトや中堂達の中で、場を賑やかにし、ミコトのサポートに回ってくれる彼女は、間違いなく同僚にしたい女ナンバーワンだろう。少なくとも私はそうだ。彼女とミコトが並んで歩いていたり、一緒にご飯を食べているカットがこのドラマには何回も出てくるのだが、その度に息の合った会話劇を繰り広げ、視聴者に安堵する瞬間を与えてくれる。彼女の功績は大きい。そして有能だ。事件に巻き込まれて容疑者になったりするけど。

 

 にひひという言葉が似合う笑顔が眩しく、時には落ち込んだミコト達を励ます。それでもミコトとは「友人じゃありません」なんて言うんだから……その後でびっくりするくらい良い笑顔で一緒に飲みにいって、最終的には長期バカンスの計画まで立ててるじゃん……あのさあ!!!!!!!!(突然興奮するオタク)

 


 ミコトと中堂が表の主人公とするならば、この物語の裏の主人公とも呼べるのが、窪田正孝(はい出た!!!!!!!!!!!)演じる久部六郎(くべろくろう)であろう。

 

 彼はUDIラボに記録員として雇われたバイトの医学生で、代々医者の家系に生まれている三男坊である。とは言っても医者になる決心をつけられたという訳でもなく、自分が何になりたいのか分からずにいる。

 

 彼は法医学者を目指している訳ではなく、UDIラボの内部事情を知るためにとある記者によって送り込まれた俗にいうスパイみたいな存在なのだが、医者の卵ではあるが法医学の分野に関しては明るくない彼は視聴者ともリンクして、的確に我々が分からない質問を周囲(主にミコトや東海林)にしてくれる。

 

 どうしても視聴者目線に立つ事が多い彼なので、彼が記者としての自分と、法医学を真剣に学びたい自分とで葛藤している場面が入るとどうしても苦しくなって視聴者は死ぬ。

 

 ミコトの事を少し意識しているかのような描写が挟まり、視聴者は彼の恋と呼んでよいものか、それすらも危うい小さな感情の機敏にニコニコしてしまうのである。にっこにっこ。一緒に水に沈みそうなトラックの中で命の危機に晒されたり、的外れな推理をしてはへっぽこと言われる彼はまじで小型犬みたいで微笑ましい。東海林と並んでこの物語の癒やしである。

 


 ……と、今紹介した四人の他にもUDIラボの所長である神倉さん(松重豊)だったり、ミコトの母親である夏代さん(薬師丸ひろ子)だったり、パワハラを訴えた張本人でムーミンに愛を向けている坂本さん(ゆるキャラみたいな癒やしキャラ)(飯尾和樹(ずん))だったりがいるが、ここでは長くなりすぎるので紹介は省く。とにかく全員良いキャラです!!!!!!!!見て下さい!!

 


3 Lemonという怪物

 


 ここからが本題だ。ここから読んで欲しい私がアンナチュラルに対して言いたい事の全ては米津玄師の紅白にも出た、現在YouTube上で6億再生もされているこの主題歌に詰まっている。

 

Lemon

Lemon

  • 米津玄師
  • J-Pop
  • ¥255

 

私の感情を一言で言うと、

 


Lemonのサビの外人達とウェッで笑っている全ての人類は絶対にアンナチュラル見ろ!!!!!!!!

 


という事である。アンナチュラル見た人がウェッで笑ってたらそれは私の管轄外です……。私は未視聴の状態で笑ってたがもう笑えん!!

 

 米津玄師のツイッターを見ると、この曲はこのドラマの為に書き下ろしたと書かれている。つまり、Lemonを骨の髄まで理解する為にはアンナチュラルを見るのは必然の行為なのである。

 

 アンナチュラルはめちゃくちゃ良いタイミングでこの曲が流れ出すとはよく言われていたが、その感想達に一つの間違いは無い。毎回毎回、死の不条理さと、それでも前に進むしか無いと登場人物達が受け入れ、一瞬だけ何も音が鳴らず、視聴者に委ねる無音の世界が訪れた後、あのフレーズは流れ出す。

 

「夢ならばどれほど良かったでしょう」と……。

 

 別名視聴者殺しのテーマ。(涙腺)死刑執行のテーマ。これは勝手に私が名付けた。

 

四話くらいまで見たところで最後の四分くらいになるとそれは流れ出すので、頭の中の小松菜奈が「来るよ!!Lemonが!!」と叫んだ。(因みにこれは霊能バトル地獄映画「来る」の話ではない)

 

 恐らくスタッフの中に最高のタイミングでLemonを流す為だけに雇用された人間がいるはずだ。多分クリープハイプの「憂、燦々」でのサビ前の「ンパー」担当の人のように……。

 

憂、燦々

憂、燦々


 因みに、アンナチュラルを最終話まで駆け抜けた私の感想は「実質アイカツ!」だったのだが、その大部分の理由がこの曲にある。

 

(以下、アイカツ!の短い話)

 

アイカツ!には「カレンダーガール」という屈指の名曲が存在するのだが、歌詞だけを見るとよくある「どこにでもいる普通の女の子が何でも無い日常を友達と楽しみながら日々を過ごしていく」というものだ。

 

カレンダーガール

カレンダーガール

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  • アニメ
  • ¥255

 

 歌詞の内容だけでも非常に素晴らしいのだが、この曲が屈指の名曲たり得る理由は、アイカツ!というアニメ作品がこの作品を本当に昇華させるまでに積み上げてきた全50話という道のりがあるからだ。アイカツ!はストーリーと楽曲をリンクさせるのが非常に上手い。なんでもない曲に、アイドルの成長を組み合わせる事で、他に換えがきかない、この曲でなくてはならない、という理由付け、楽曲の肉付けをしてくれる。

 

 カレンダーガールという曲も、最後にアニメの主人公であるいちごちゃんが海外へと行くために大親友であるあおいちゃんと別れるという、何でも無い日常が崩れていくその瞬間にこの曲を流し、決して他の曲では変えられない印象を付けた為、オタクはこの曲を聴いて泣く。ただの曲に過ぎなかったカレンダーガールに、感情という質量が乗ったのである。

 

(以上、オタクのアイカツ!語り終わり)

 


 つまり何が言いたいのかといえば、アンナチュラルというドラマは今までこの曲を表面上でしか理解していなかった人間に対して、Lemonという化け物ソングを質量を与えて視聴者にフルスイングでぶつける、恐ろしくもあり、同時に素晴らしいドラマなのだ。

 


 身近な人間と別れを経た人がこの曲を聴いて泣く、それは理解できる。だが、泣ける曲に必要なのは共感する事だ。私はそう思っている。

 

 幸いな事に、私はまだLemonの歌詞の気持ちを心の底から味わった事はない。家族はまだ生きているし、身近でいなくなった人間もいない。だから、Lemonを離別する推しカプの曲にする事はあっても、心から理解できないでいた。 

 

 そんな人間に、ただの日本語の文字列に質量を与えて、心にぶち込むのがこのドラマなのだ。不条理な死に立ち向かった人々の心情を、この曲はいっそ痛々しいほど真正面から綴っている。この曲を聴いて救われる人間がいる事も納得できてしまう程、目を逸らしたくなる程の心の動きを、一切誤魔化す事無く聴いた人間にぶつけてくる。(この記事を書きながらLemonを聴いているが、つい数日前よりも確実に解像度が上がった)

 

 

 

4 終わりに

 


 長い事書いたが、これは決してアンナチュラルがLemonの付属品だという話では無い。このドラマが、真っ直ぐ死者と、そして死、別れと向き合ったからこそ、視聴者は何かを感じ取るのだ。これは稀有な経験だ。滅多に味わえるものでは無い。

 


 正直な話、「石原さとみの唇がすごいからそれだけでもいいから見てくれ」という事は出来る。

 でも、それだけじゃない程の、溢れんばかりの魅力を、彼女は持っている!

 

 このドラマの彼女は美しく、強い。

 

 そしてどうしようもなく今を生きている。死を憎みながら、それでも生きている。死者の後悔、生者の苦しみ、そしてエゴ、そのどれもを、真正面から受け止めて、それでもミコトは前に進んだ、旅は終わらない。

 


 どうか、一話だけでもいいから見て欲しい。特にこの一話は2020年のこんなご時世だからこそ胸に詰まるような話だ。そしてどうか、何か感じれるものがあったならば、我々が見れる彼女達の旅を、最後まで見届けて欲しい。

 

 

 

私は今からMIU404見てきます!!!!!!!!!じゃあな!!!!!!!!!!まってろよ星野源!!!!!!!!!!!!!!!!