ロン毛取立人

戦慄怪奇ファイルコワすぎ!と逆転裁判とワンピースで身体の半分が構成されている腐女子です。

2020年も終わるので、私と小説、それから触れた作品について振り返る

今年最後の、ブログタイトル通りの内容である。

今回はネタ要素は薄めで……行く!(死神騎士くん)

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私は趣味で二次創作の小説を書いている。俗に言う「字書き」だ。

 

字書きといえば、今年は「おけけパワー中島」を始めとする「同人女の感情」が大いにTwitterでバズッた年だった。

私のジャンルに「神」がいます (コミックエッセイ)

この漫画の登場人物に感情移入したり、「私はおけパだな」とかなんとか言った方も多いのではないだろうか。

はてなブログでも、noteでも、匿名ダイアリーでも、ちょっと調べれば「おけパ」と「綾城さん」の文字を、そこに乱された人間の感情を垣間見ることが出来た。

 

字書きの話題(主に愛憎入り混じった特大感情と呼ばれる類のもの)は定期的に匿名ダイアリーで見れたが、こんな風に漫画で「字書き」を取り上げられ、更新日には毎度トレンド入りをするのは初めてだった。真田先生、楽しく読ませて頂きました。

 

私の話に戻るが、10万字を始めて書いたよブログでも書いたように、今年は私自身が趣味で文字を書く人間として、大いに意識が変わった年だったように思う。

 

ronngetoritate.hatenablog.jp

 

 そこで、後々の自分の為に、2020年の創作関連について振り返り、文章の書き納めにしようと思う。

私得の記事でしかないが、ブログなんてそんなもんなので許してほしい。

だが、これが字書きとして何か悩んでたりする人の助けになれば幸いである。

 

 

 

2020年の私と、二次創作

今年の私の作品の主な傾向として、文字数が伸びた事は大きな特徴だ。

 

二年程前までは一万字を超えた作品があれば頑張った! というレベルだったが、最近ではデフォルトで三万字くらいになる事が増えた。

 

だが、これは別に文字数が多ければ多い程良いと言っているわけでは無く、単純に私がそう変わったというだけの話だ。(長い方が良い作品だと思い込んでしまっている字書きの人は星新一を読めばいい)

 

 中編を書けるようになって良かった事は、

 

  1. テーマについて(これはメインとなる二人の関係でも、何か起こる事件などの事でも、何でも良い)、深めて書ける。
  2. 短編との、達成感の違いを味わえる。
  3. プロットが書けるようになった。

 というこの三点に尽きる。

 

短編を書いていた当時、書きあがった作品を見て、「なんか最初に想像していた話よりも薄っぺらい話になってしまったなあ……」という事が多々あった私にとっては、よりテーマを深めて書けるようになった事はとても嬉しい事だった。

 

そこそこの文字数を書けるようになったきっかけはプロットを書くようになったからだろう。

私は先の展開をがっちり固めないと話が書けない人間だと、それなりに詳細なプロットを書くようになってから分かったので、プロットと自分の相性、本当に大事。

 

10万字を超える長編に関しては、上記でリンクを張ったブログ記事に長くまとめたので、そっちを見て欲しい。

 

後は、自分の書きたいものの方向性が、この一年ではっきりしたのは大きかった。

 

私が書く話の三本軸は「救済」「受容」、そして「光」だ。

 

今年は合計で60万字くらい書いただろうか……その中で、私はこの三つが書ければ満足なんだと知れた事が何よりも良かった。最終的にそこに至るんだったら、足の骨折っても死にかけても村が焼かれても人の死体を見て吐きそうになっても、私の中で全部オールオッケーだ。

 

……今年一年で割と最悪な腐女子としての性癖が目覚めたと自覚している。

 

 

2020年の私と、観た映画

 

 今年私が劇場で見た映画は「羅小黒戦記」と「劇場版 ヴァイオレット・エヴァ―ガーデン」が素晴らしかったの一言に尽きる。

 

どちらもアニメーション作品で、前者は、一つの関係性の始まりを、後者は終わったかと思われた一つの関係性の再生を、とてもとても丁寧に描いていた。

どちらも背景美術が凄まじく、――特にヴァイオレットに関しては、京アニの全てを注ぎこまれているんじゃないか? と画面に釘付けになってしまう程、全てが美しかった。

二作品に共通して言える事は、感情の機敏を、映像描写で、これでもかと言うほど描かれている点だった。

この二作品の主人公はどちらも、映画の上映時間が終わった後も、傷つきながら生きていくだろう。だが、それがありありと想像できるからこそ、彼らは普通のフィクションの何倍も美しく、そして確かに生きていた。とても良い映像体験でした。

 

また、欅坂46のドキュメンタリーも見た。

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彼女達の事なんて少しも知らなかったけど、それでも刺さるようなものがあった。さんかく窓の外側は夜、みようと思います。

 

アマゾンプライムで見た映画に関してはファイトクラブ「セブン」という、往年の名作が良かった。私はこれからの人生をブラット・ピットに滅茶苦茶にされるんだろうなあと悟った。乾いた映像に、乾いた人間達。だが、そこにある感情は、生きづらさは、気持ち悪い程に濡れていて、その落差に胸が躍った。

 

映画は現実逃避する為に見れば見る程超面白いという事を、ブラピは教えてくれた。ありがとうブラピ。

 

因みに、2021年に公開予定で、私が一番楽しみにしている映画は、「映画大好きポンポさん」だ。

pixivに原作漫画が投稿された時から、ずっと読み込んでいる漫画で、創作の美しさ、楽しさ、熱狂。その全てが盛り込まれた上で、綺麗なストーリーで読者を魅了した。

コロナの影響で公開時期が延期を重ねているが、この作品を劇場で見れる時を、心の底から楽しみにしている。

 

pompo-the-cinephile.com

 

2020年の私と、読んだ小説作品

このブログ記事の本題だ。

2020年は近年の私の中で、最も小説を読んだ年だった。

きっかけは11月頃、私のジャンルに「神」がいます(最初に紹介した同人女の感情の書籍版のタイトル)の最終話が投稿された事だった。

 

【同人女⑩】天才字書きのアンチ 前編www.pixiv.net

(これは前編だ)

登場人物の一人であり、作中の中で「字書きの神」と称される綾城さんが、作者である真田さんの中では「多くの創作物に触れ、自分の中にインプットし、同時に、小説を書く事により、アウトプットを繰り返している人物」というのが明かされた。

私は二次創作の小説を書いて、ありがたい事に評価を貰っていたが、書けるなら、面白くて上手な小説を書けるほうがそりゃあ良い!  なら私も本を読んでみるか! 字書きの癖に全然本読まなかったし!! という、あまりにも浅い動機で読み始めた。

 

新世界だった。 

今までなんで小説を読む習慣が無かったんだ? と思う程に、小説は面白かった。まあ読んだのが古典的な名作や、近年の傑作ばかりな故にそう思ったのかもしれないが本当に、目玉が飛び出るんじゃないかと思う位面白かった。

 

というわけで、2020年の書き納めブログの最後は、読んだ本のプレゼンをして終わろうと思う。

pixivでの評価やTwitterでの評価を気にしすぎてしまう人程、商業小説を読むべきだと思った。なんかそれまでの自分が馬鹿らしくなるので……(自分の体験談)

私が読んだのは本当に有名な作品ばかりなので、読んだ事ない人でもとっつきやすいと思う。

 

 

ライ麦畑でつかまえて (白水Uブックス)
 

 

ライ麦畑でつかまえて(J.D.サリンジャー

 

名前は誰もが聞いたことがあるような有名な一作。私はこの小説を一番最初に読み始めた。(その時書いていたキャラの心情に重なるかなと思ったので……)

内容としては、現在は精神病院に入院している主人公ホールデンの、冬休み前に学校を抜け出して冬の街の歩いた際の一人語りだ。

冬の街は孤独で、主人公は空いた穴を埋めようと、知り合いに電話をかけては出会う事を繰り返す。

それでも主人公の穴を真に埋められる存在はいないまま、大人に対する反抗心や、虚無感を強めていく。

世界中の思春期の子供に寄り添って、「俺はホールデンだ」と思わせた。

思春期の繊細さや、全てに対する嫌悪感を丁寧に切り取った一作である。

 

人間失格

人間失格

 

人間失格太宰治

 

多分日本人なら殆ど名前を知ってる小説だろう。(ただ読んだことがあるかどうかは別)

この機会にと、名前しか知らなかったこの話を読んでみる事にした。

これを読む直前に、孤独死した人の部屋に人間失格が置いてあったニュースを見てしまったので、(ひょっとしたら自分も死にたくなったらどうしよう……)と大いに心配したが、結果として、私は主人公に一切の感情移入が出来なかった。

おそらくは、感情移入出来た歳を過ぎてしまったのだ。

物語のストーリーは端的に言えば「プロのヒモ成長物語」だ。(正しく成長したかどうかは判断にお任せするところだ)

プロのヒモの才能はピカイチな主人公が、至る所で女をたぶらかして、フラれたり寝取られたり心中を図ったりしながら生きていく話だ。

これを薦めた友人は「人間失格はギャグ」と言っていたが、あながち間違いではないと思う。

ただ、人間としての種類は根本的にダメ人間になるだろう主人公が、周囲からは「天使のような良い子だった」と言われるのは、人生ってままならねえなあと感じる。

 

痴人の愛

痴人の愛

 

痴人の愛谷崎潤一郎

 

人間失格と同じで、題名だけ知ってるけど、読んだ事ないシリーズとして読んだ。(こういうのは、ゲームの実績を解除していくかのような感じがして面白い)

内容を端的に説明すると、歳下のすごく綺麗な女(ナオミ)に、真面目な男が狂わされていく話だ。

最終的に男は奴隷のような扱いを受ける事になるのだが、それでもナオミが好きで好きで仕方がないから、ずっと狂っている。まじで本編中ずっと狂っている。破滅の道に片足を突っ込んで、両足も突っ込んで、最終的に頭まで沈み切ったところで物語は終わる。

基本的には、とんでもなくくだらなくて(山と言えるような展開はそんなにない)とびきり面白い小説だ。

深夜特急シリーズ(沢木耕太郎

 

同人女」シリーズでは、登場人物が綾城さんの小説を読んで、「こんなに面白い小説がこの世に存在するのか……!?」といったことを感じるが、まさに私にとってのそんな作品がこれだった。

もう冗談抜きにしてずっっっと面白い。

バスに乗って日本からイギリスまで行こうとする作者の体験記なのだが、どこの描写を切り取っても、エンタメとして最高峰だ。

まず金がないから超低価格で泊まれるラブホに泊まるという時点で面白い。

この物語で描かれるのは、現地の人の、生きた鼓動と、生への衝動と、未知への憧れ、とてつもなく眩しい一期一会だ。

漠然と、海外への憧れを抱く人間は、絶対に手に取って読んで欲しい。そして、未知の世界に、身体が震えるほど興奮して欲しい!全6巻。

 

砂の女 (新潮文庫)

砂の女 (新潮文庫)

 

砂の女安部公房

 

砂丘に虫取りに行ったら、砂の穴の中に閉じ込められて、必死に脱出しようともがく男の話だ。

 

例えば深夜特急が興奮で喉が渇くタイプの面白さだとしたら、読んでいると喉が枯れてくるのが砂の女だろう。

前者は最高速度で最初から最後まで面白いのだが、この話は最後まで鈍足のまま、じっと息を潜めるような面白さが続く。

 

いや、面白いのか……?多分面白いんだと思う。少なくとも、最後まで読めたから、面白いに分類される筈だ。

ただ、じわじわと侵食されるような恐ろしさと虚無が襲う。見て損はない一作。

 

 

博士の愛した数式 (新潮文庫)

博士の愛した数式 (新潮文庫)

 

博士の愛した数式小川洋子

 

現在の私のオールタイムベストはこの話だ。

有名なのでもう特に語る必要もないかもしれないが、私は小説を読んで初めて「泣く」経験をした。

記憶が80分しか持たない数学の老博士と、語り手である彼の新しい家政婦と、息子の物語。

特に激烈な何かが起こるわけではない。博士の記憶は80分以上続くようになるわけでもない。

この物語の中にあるのは、淡々とした日常だ。

大きな事件は起こらない、博士が記憶を失いたくないと嘆く事もない。ただ、淡々と、三人の日常が流れていく。

ただ、それが本当に美しく、可愛らしく、抱きしめて、心のうちに鍵をかけたまま閉まっておきたくなるような衝動に駆られる。

博士は子供が好きだった。毎日忘れても、毎日、語り手の息子の事を大事に思い、忘れないようにメモを取る。

博士との出会いをきっかけに、二人の世界は変わっていく。

愛おしさをぎゅっと一冊に押し込んだような、たまらなくなる小説。

 

 

私が大好きな小説家を殺すまで(斜線堂有紀)

 

今までのは往年の名作だったが、純粋に私の好きな若手作家の作品から一作。

一言で言えば地獄である。

自分を救ってくれた、大好きだった小説家が徐々にその才能を枯らしていった時、救われた人間はどうするのか?をたっぷり見せられる。

相手を救おうと思って、己が努力しても、それは相手を追い詰めるだけで、何も出来ない。喉の奥にどろっとした泥が詰め込まれたような、這うような苦しさがずっと読者を包む。

めちゃくちゃ文章が読みやすくて展開が地獄なのでおすすめ。

この人の作品は「キネマ探偵カレイドミステリー」「恋に至る病」「死体埋め部」と、どれも人間同士のやっばい感情で救い救われをやっているのでおすすめです。

推し、燃ゆ

推し、燃ゆ

 

推し、燃ゆ(宇佐見りん)

 

問題作(私の中で)

 

先程の「私の大好きな〜」を、もっと現実的に、それでいてもっと救いを無くすとこれになる。正直二度と読みたくない。

主人公の推し(人気男性アイドル)がファンを殴って炎上したところから始まる物語は、最後まで救いがない。

これならまだ「私の大好きな〜」の方が何倍もマシである。あっちはまだ落ちぶれてしまった方の人間と関わりがある。どうしようもできなかったけど、まだ、何かが出来た。

だが、この話は違う。全てが画面の向こうで終わるのだ。こちら側の人間は、勝手に救われて、勝手に人生を推し色に染めて、勝手に絶望する。主人公はただの一般人で、相手は人気アイドルだ。

 

作者は最年少で文藝賞を受賞した新進気鋭の女性作家。読んだ人間を圧倒するような文章力で、湿っぽい現実を書き切っている。

正直二度と読みたくないけど、学校のプールサイドの水の気持ち悪さ(という私が抱えていた、言葉にできない不快感)を描写してくれた時、私はこの作者を追いかけると決めた。

 

正直、全てのpixivなどの評価に悩む字書きに最も読んで欲しいのはこの本だ。

自分が悩んでいる間に、圧倒的な文章力で、瞳が乾くような、鈍い痛みの続く現実を描写されると、全てがどうでもよくなる。

体全身で鉛を引き摺るような感覚に陥りたい時にはおすすめ。

 

それに、アイドルでも二次元でも、YouTubeでも、何かを推した事のある人間には絶望を突きつけるような、そんな話だ。最悪だよ。

 

 

 

 

2020年の終わりに

 

なんだかんだ言ってこのブログも、二か月に一回という、亀みたいな更新頻度ではあるが続けられている。

今年はアイカツの記事や10万字を書いた時のメモ、命乞いのブログなどを、今までの私と比較すると信じられない程の反響をいただいた。

 

このブログはTwitterを少し探せば転がっているオタクブログ以外の何物でもないが、今後も己の「好き」を発信できる腕を磨き続けられるように、細々とではあるが、このブログは続けていきたいと思う。

 

じゃ、私は担当アイドルの和服衣装を取りに行ってくるんで、それじゃあ……。